研究概要 |
1.地質班 本多は吾妻・八幡平・栗駒各地熱帯を対象に変質帯の調査と変質岩・火山岩の生成年代をTL法によって測定し、吾妻地域では若い年代を示す地域が有望であることを推論した。八幡平では、古い地熱活動に新しい活動が重複している可能性を示唆した。歌田は東北地方に点在する新第三紀最上部の湖成堆積層の地熱帯における意義を強調し、とくに秋田県東南の三途川層の地質構造と変質を詳細に調べ新知見を得た。林は数10万年より若い火山岩の生成年代測定にフイツション・トラック法を応用し九州の地熱帯の地史の解明を試みた。 2.物探班 鍋谷は従来のMT法の探査精度を上げるためにアレイ方式を採用し、本年度は高性能磁力センサー及び探査方式の研究開発を進め、野外において測定を実施した。その結果、MT探査法の能率と精度を数段向上させることに成功した。これはとくに我が国のような地質構造の複雑な地域で有効である。本蔵は従来のMT法が深部情報を伝える低周波領域でとくに弱点を示す問題点を克服するため観測方式及びデータ処理法の改良、さらに2次元、3次元的構造に対処できる計算法の開発などを研究した。研究地は登別地域、池田湖周辺のほか小安・泥湯地域である。 3.地化学班 古賀は地表で採取され分析した地熱流体試料から、その流体の生成平衡温度を計算により求め、その地域の地下構造を化学的に推定し探査に役立せる研究を別府地熱帯で実施した。松葉谷は川原毛、秋の宮地域の地熱水の水素と酸素の同位体比を測定し、地熱水の起源を推定した。また北霧島地域で土壌ガス中のHe,【H_2】,【CH_4】,Rn及び【CO_2】の濃度と【CO_2】の炭素同位体比を測定し、Rn,【CO_2】及び【H_2】ガスの高濃度地域を見出した。そして土壌ガス中の【H_2】ガスの存在と高炭素同位体比を有する【CO_2】の存在が深部高温熱水の賦存と深く関係している可能性を見出した。
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