研究概要 |
1. プラズマCVD法による絶縁膜の形成 50Hzの低周波プラズマを用いて、室温で高温形成のCVD膜に匹敵する電気的特性をもつシリコン窒化膜を堆積する技術を確立した。これにより、絶縁膜の種類・形成法(【Al_2】【O_3】,Si【O_2】,【Si_3】【N_4】膜;陽極酸化法,プラズマCVD法など)と非晶質シリコンMIS構造の電気的特性との関連が明らかとなった。 2. 非晶質シリコンMIS構造の電気的特性 MIS構造の容量-電圧(C-V)曲線には、(a)低周波における正バイアス側での容量のへこみ,(b)負バイアス側における容量の急峻な変化とその強い周波数依存性,温度依存性,(c)正バイアス全域にわたる容量の周波数分散など、通常のSi MOS理論では説明できない複雑なふるまいが存在することが見い出された。また、等温過渡応答スペクトル(ICTS)の時定数分布から、バルク局在準位を含むMIS界面の実効的界面準位密度は、伝導帯下0.4〜0.6eVで【10^(13)】【cm^(-2)】・【eV^(-1)】台であることが見い出された。 3. MIS構造アドミッタンスの数値解析プログラムの開発 非晶質シリコンMIS構造のC-V特性を評価するため、バルク局在準位および界面準位のエネルギー密度分布,動的特性を考慮したアドミッタンスの厳密な数値解析プログラムを開発した。 4. 計算機シミュレーションと測定結果の理論的解釈 バルク局在準位・界面準位の妥当なパラメータ値を使用して種々の条件下でC-V特性の計算機シミュレーションを行ない、温度特性も含めて、実験結果とよく一致する結果を得た。これより、観測されたC-V曲線のふるまいは、(a)バイアスにより界面準位の低周波容量が変化する過程,(b)界面準位容量が急速にバルク局在準位容量に緩和していく過程,(c)非晶質Si自身が誘電緩和する過程に、それぞれ、対応することが明らかとなった。また、従来説とは逆に、絶縁体-非晶質シリコン界面の特性は、局在準位ではなく界面準位によって支配されていることが判明した。
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