研究概要 |
光励起された半導体表面は反応活性である。光励起で生じた少数キャリアーがn型半導体では価電子帯の上端に、p型半導体では伝導帯の下端に集りやすく、しかもそのエネルギー位置から考えて、前者では酸化力が強く、後者では還元力が強いと言える。本研究では代表的n型半導体であるZnO,CdS,Ti【O_2】などを光電極系として、また粉末を用いる光触媒系として用いたときの有機物の関わる反応、特に新しい有機燃料の合成の可能性について検討した。 (1) 光励起された半導体電極上での有機物の反応:n型ZnO半導体を用い、有機物存在下で光照射し、電流-電位曲線の測定と生成物の分析をおこない、基礎データを得た。2-プロパノールを添加したときの光アノード反応では酸素は発生しなくなり、ZnO電極は安定化された状態でアセトンが電流二倍反応で生成した。また第二ブチルアルコールなど種々の第二アルコールの反応も検討し、ZnO電極を用いる光電気化学的ケトン合成反応を調べた。 (2) 有機化合物が関与する光触媒反応初期過程の生成物同定:有機物が光励起半導体表面で反応するとき、ラジカルが生成するものと予想されるが、Ti【O_2】粉末系における各種アルコールの反応についてスピントラップ剤を用いるESR法で検討した。MeOHやEtOHなどでは、ESRシグナルが観測されなかったが、これは生成したラジカルがスピントラップ剤と反応する前に、Ti【O_2】伝導帯へ電子を注入するためと考えられた。一方tert-BuOHでは光電流の増加がみられなかったかわりに、ラジカルを検出した。 (3) 光触媒反応による水の酸化反応の機構検討:水が関与する光触媒反応の機構を分光学的に検討した。Ti【O_2】コロイドを用い、その300〜500nmでの吸収スペクトルの変化から水の光分解で生じる酸素種がTi【O_2】表面にペルオキシド棣に化学吸着したものであることが示唆された。
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