研究概要 |
(1)n-ペンタン及びn-ヘキサンの反応では、転化率はH-ZSM-5とGa-ZSM-5との間にほとんど差がない。反応の第1段階であるパラフィンのクラッキングに対する活性、すなわち、ゼオライトの酸性質には、Gaの導入が大きな影響を与えないことを示している。一方、芳香族炭化水素への選択性は両触媒でおおきな差がある。すなわち、500℃における芳香族炭化水素の収率はH-ZSM-5で25%であるのに対し、Ga-ZSM-5では50%であった。各種生成物の収率の接触時間依存性から、Gaは中間生成物であるオレフィンの芳香族化に有効に働いているものと結論した。 (2)H-ZSM-5,Ga-ZSM-5を触媒として、プロピレンの転化反応を行った。500℃における水素の収率は前者で30%、後者では77%であった。また、Zn-ZSM-5も芳香族化に有効であった。酸性を制御するため、Znでイオン交換したボロシリケートで反応を行うと、低転化率において、約65%の選択性でブタジエンの生成がみられた。この事実は、Znがオレフィンの脱水素に有効に働いていることを示している。また、ZSM-5系触媒では、オレフィンの相互変換反応が、芳香族化よりも速やかに進行することを示し、これが、芳香族生成物の分布が出発オレフィンの種類にあまり依存しない原因であると結論した。 (3)メタノールの転化反応をH-ZSM-5,Ga-ZSM-5,Zn-ZSM-5を触媒として行うと、427℃における芳香族炭化水素の収率はそれぞれ、4%、60%、65%であり、Zn-ZSM-5が最も高い芳香族炭化水素への選択性を与えた。しかし、この温度以上では、メタノールの一酸化炭素と水素への分解が顕著となった。また、メタノールからオレフィンを与える触媒(H-ボロシリケート)とZn-ZSM-5の組み合わせによっても、芳香族炭化水素収率が向上することを明らかにした。
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