研究概要 |
(1) 還元的水素化炭の調製とキャラクタリゼーション:石炭有機質に水素を添加する方法としてバーチ還元法(A)とカリウム金属でアニオン化しアルコールで還元する方法(B)を採用した。200mesh以下に粉砕した太平洋炭(C% 76.1)とかいらん炭(C% 86.6)をA法,B法で還元的水素化したところ、前者では水素が100炭素当り約1個と2個で後者では15個と26個であった。FT-IRの差スペクトルから2926および2856【cm^(-1)】にメチレン吸収の増加があり2956,2871【cm^(-1)】にメチル基による吸収の増加があった。このことから芳香環への部分水素化と炭素一炭素結合の開裂が一部起っていることがわかった。 石炭のX線回析測定から還元することによって石炭の芳香族の積層構造の平面に垂直な方向の結晶子の長さLcが減少していることがわかった。これは積層構造の部分的崩壊のためと考えられる。 (2) 還元的水素化炭の液化反応:石炭を2倍のテトラリンと共に微粉鉄触媒を用い100mlのオートクレースで液化反応を行った。反応温度は425℃で1時間反応させた。生成物はガスとヘキサン可溶部(オイル)とヘキサン不溶-ベンゼン可溶部(アスファルテン)にわけた。太平洋炭の場合原炭を無触媒で反応させたところ転化率29.5%であったがA法による還元炭は47.0%と増加、B法のものは55.7%の転化率を示し、あらかじめ石炭有機質に添加したわずかな水素が良好な反応結果を引き起すことが明らかとなった。触媒を用いると還元炭でオイル分の著増が観察された。一方かいらん炭の原炭を液化すると無触媒で23.9%の転化率を与え、触媒を用いても26.6%(オイル7.5%)と低い転化率を示す。しかしA法による還元炭を触媒下反応させると転化率は42.8%(オイル10.6%)に増加し、B法による還元炭では転化率52.0%でオイル分は31.9%で著増し、水素消費は前者とほぼ変らない結果を与えた。このことからシヤトリング水素の増加は反応初期だけでなくオイルの様な最終生成物にも良好な影響を与えた。
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