研究概要 |
石炭のガス化反応の律速過程であるチヤーのガス化において、その反応活性は炭種により大きく異なるが、輸入に依存する本邦では特に炭種に汎用性の大きい技術の開発が要請されている。本研究は、簡便に測定できる原炭の物性値から、活性序列を予測する手法の確立、並びにガス化速度を促進し、かつ生成ガス組成を制御し得る廉価で実用性の高い触媒の開発を目指している。そこで国内外産の30種の石炭に対して、既往の1000℃以下の低温熱分解チヤーに対する実験手法を、高温熱分解(乾留・チヤー化)過程を含めた全過程へと拡張し、より実際的なガス化プロセスの把握に努めた。主要な成果は以下の通りである。 (1)温度(〜1400℃)と時間(〜240分)を広範囲に組み合せた条件下で石炭の熱分解を行い、生成チヤーの発熱量、細孔容積、表面積などの物性変化を測定し、不明な点の多い高温ガス化プロセス開発の基礎データとして有用な知見を得た。 (2)【H_2】O,【CO_2】,【O_2】により石炭の迅速昇温・定温(950,1250℃)ガス化を行い、ガス化の進行に伴う石炭粒子の細孔表面積(【N_2】,【CO_2】吸着法)や細孔容積(包蔵水分)、細孔径分布(【N_2】,【H_2】O凝縮法;Hg圧入法)を追測し、1250°〜1400℃域でもチヤー粒子内部で活発な細孔の開発と消滅を伴っており、高温度領域で認められるガス化速度の炭種依存性の一因を明らかにした。 (3)チヤーのガス化活性を原炭の固定炭素含有率(FC)と包蔵水分(細孔)容積とにより相関する既往式において、石炭重量あたりの固定炭素のもつ発熱量は、FCに代る活性評価因子として有効である。 (4)耐硫黄性の点からガス化触媒として期待されるNa、KやCaの水溶液中に含浸(25時間)後瀘別する単純含浸法による担持量を30炭種について比較・検討したが、担持可能な炭種は酸素含有率と細孔容積の比較的大きい7種のみであり、チヤーでは全く担持されなかった。また、担持含浸後の蒸発乾固担持のNa量とガス化促進能の関係についても明らかにした。
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