研究概要 |
九州地方における地熱地質構造の研究として、本年は九州の基盤地質と後期新生代火山岩類との関係を検討し、この両者は密接に関係していることを明らかにした。その概要を列記すれば次の通りである。 1.北中部九州では既に提唱した別府-島原地溝の北側に、これと平行するように国束-英彦山,津江-鯛生,多良岳の各地域に後期新生代火山岩類分布域があり、それぞれ陥没構造域を形成している。これらと別府-島原地溝の間には、最大15kmの幅の隆起地帯が存在する。 2.南部九州では霧島-鹿兒島湾地溝の西側に肥薩、北薩および南薩地域の後期新生代火山岩類分布域が存在し、各地域の陥没構造域が推定され、霧島-鹿兒島湾地溝との間に隆起域が存在する。 3.1,2の後期新生代火山岩類分布域には後火山作用としての低温の温泉はあるものの、活動的地熱帯は全く存在しない。 4.別府-島原地溝の南側、霧島-鹿兒島湾地溝の東側においては、局地的に中新世の花崗岩類と火山岩類(大野,大崩山〜祖母山,高隈山,大隅)と、おそらく鮮新世の三角半島の火山岩類が分布するが、地熱活動としては見るべきものがない。 5.別府-島原地溝内には、中部九州の活動的火山の由布・鶴見,九重,阿蘇,雲仙の各火山群のすべてがこの中に分布し、外側には分布しない。また地溝内には東西性、それに近い断層が多く発達する。 6.南部九州の活動的火山の霧島,櫻島,指宿,開聞などは、すべて霧島-鹿兒島湾地溝内に分布し、地溝外における活動的火山は全く存在しない。 7.九州における地熱変質と比較するため、北海道豊羽鉱山における変質鉱物を検討し、九州大岳地熱帯における変質【III】型、または【IV】型の存在が推察される。 8.以上をまとめると、別府-島原地溝、および霧島-鹿兒島湾地溝内には、活動的火山とともに、高温の温泉,地嶽,噴気,および地熱通路となる断層を含めて地熱活動度が高く、有望な地熱鉱床はこの両地溝内に限定される。
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