電気自動車の研究・開発はこの10年間については停滞期に入っていると見てよい。しかし、自動車技術、新素材技術および電気関連技術において、この10年間に電気自動車の性能向上に役立つ技術が続々と開発されてきた。これらの新しい技術を用いれば、電気自動車はどれ程の性能が得られるのかを検討するのが本研究の目的であった。 そのために、電気自動車の関連技術のそれぞれについて、最新の情報を収集することから標め、これらの情報をもとに、性能をシミュレートするためのコンピュータプログラムを開発を行った。 新たに収集した情報は、1)タイヤの転がりまさつ係数、2)空気低抗係数、3)ボディー用材料技術、4)モーター用新材料、5)コントローラー用新素子等 である。 性能計算用プログラムは1)各種の走行モードにおける一充電走行距離、2)加速性能、3)最高速度、4)一次エネルギー使用率 および5)維持費のそれぞれについて計算可能なものを開発した。 仮定として4人乗りの乗用車を考え、電池は現在入手可能な鉛電池を使用するものとした。そして、鉛電池を400kg積むものと考えると、結果として得られたことは次の通りである。1)一充電走行距離は、4モード走行で315km、10モードでは370km、100km/時定速走行で240kmである。2)加速性能は0→400m加速時間について20.3秒である。3)最高速度は180km/時である。4)原油をエネルギー源とする一次エネルギー使用率は0.2kwh/km(4モード走行時)でこれは、現在のガソリン自動車の約5分の1である。5)維持費は電力料金と電池の消却費との合算で、4モード走行において1km走行当り約2円である。以上の計算結果から見る限り、電気自動車は、走行性能においては十分実用的な性能を持つことができる。また、エネルギー問題の解決にも大いに役立つ。
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