研究概要 |
4【Nb_3】Snに代表されるA15型化合物は、高磁界超電導材料として最も期待されているが、核融合用材料としては高磁界下のJcの向上、電磁的・機械的特性の改善など検討すべき事項が多い。本研究は、全国各大学の超電導研究者を有機的に組織し、共通の試料を使用してこれらの諸問題を系統的かつ総合的に研究しようとするものである。本年度は、研究計画の最終年度にあたるため、これまで重点的に研究を継続してきたブロンズ法【Nb_3】Sn多芯線について超電導基礎特性、機械的・電離的性質、線材のミクロ構造など種々の観点から得られた基盤データの蓄積を進めると共にその集約化をはかり、総合的な性能が検討された。また、In Situ【Nb_3】Sn線材、粉末法線材も継続研究がなされ、これらに加えて高磁界特性の良いTi添加【Nb_3】Sn多芯線をとり上げ、超電導特性に関する重点研究がなされた。これらの主な結果を要約すると次のようになる。 1.超電導基礎特性:ブロンズ法【Nb_3】Sn多芯線共通試料にて従来観測されていたJcのバラツキがホルダーに依存することをつきとめ、正しいIc測定技術を確立させた。また、Ti添加【Nb_3】Sn多芯線のTc=16.8K,【Hc_2】=24T,および高磁場でのJc特性が求められた。 2.電磁特性:ブロンズ法多芯線の磁化測定よりJcが求められ、抵抗法によるJcとの比較により、芯線の断線状況が検討された。 3.照射および歪効果:ブロンズ法多芯線の中性子照射効果が調べられた。Tc,【Hc_2】は、線量の増加に対して単に劣化するのみであったが、Icは【10^(18)】n/【Cm^2】の線量にてピークを示し、その後急激に低下を示した。照射試料のIcの歪効果は、6Tまでの磁界下で測定され、最大Icを示す歪εmが照射前の値より増加する。 4.構造、組織等:ピンニング特性が結晶粒の増大と共に低下し、粒径が0.5μm以下になると劣化が著しくなることが明らかにされた。
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