研究概要 |
核融合炉材料開発基礎研究において最も重要な課題の一つは照射後強度特性の解析である。すなわち、重照射下ないしは照射後の引張強度特性、クリープラプチャー、疲労、衝撃強度特性など炉設計に直接必要な性質について明らかにしなければならない。本年度は、(1)He脆化、(2)照射による延性劣化、(3)照射硬化、(4)照射によるDBTT上昇、(5)照射化クリープ及び疲労 等に関する照射効果を明らかにすることを目的として研究を行なった。 (1)He脆化 北島(貞)は純鉄表面にHeイオン(0.1MeV)を注入し、低温(77K)における変形挙動を調べ、表面注入Heによる脆性破壊を見出した。井形は316鋼(JPCA鋼を含む)、9Cr-2Mo鋼(JFMS)、α+γ2相鋼(Daplex鋼)に対し、室温にてα線あるいはHeイオン照射を行ない、材料の強度、延性、破壊挙動を調べ、He注入した316鋼については粒界脆性破壊が起こるが、9Cr〜2Mo鋼、Duplex鋼については粒界破断が起こらないことを見出した。これは、9Cr〜2Mo鋼、Duplex鋼は微細な組織を持ち、粒界に形成されるHeバブルが分散したことによると考えている。 (2)照射硬化及び延性劣化 藤田,桐各,香山らは9Cr〜2Mo鋼(JFMS)316系鋼(JPCA)に対するRTNS-【II】,JMTR,JOYOによる中性子照射を行ない、フェライト相での硬化はマルテンサイト相においてより大きいことを見出した。また微細組織と硬化、微小硬度と引張強度との関係を明らかにした。 (3)照射によるDBTT上昇、茅野はJMTRにて、300℃、2.2×【10^(19)】n/【cm^2】の中性子照射した各種フェライト鋼につき高速衝撃曲げ試験を77〜473Kの温度範囲にて行ない、DBTTが9Cr-1Mo〈7Cr-2Mo〈5Cr-2Mo〈9Cr-2Moの順に高くなることを見出した。 (4)照射下クリープ及び疲労、白石,井形,奥田らは、プロトン照射下クリープ及び疲労挙動に対する照射損傷効果を明らかにした。
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