研究概要 |
本研究では高分子材料の照射効果の定量的議論の為に高速中性子やイオンの線量測定について検討を加えた。次に高分子材料中での放射線誘起反応についてパルスラジオリシス、GPC、ESR更に陽電子消滅法等による測定を行った。高分子材料の高速中性子照射は主に東大工・原子力工学研究施設の高速中性子源炉「弥生」を、またイオン照射は東大・原総センター(HIT)のバンデグラーフ加速器を用いた。またこの他に、Co60及びライナック等からの電子線を用いて高分子材料の照射を行った。 線量の評価:新しいく開発した球型の多組減速材中性子スペクトロメーターを「弥生」のファースト・カラムに適用し、熱中性子から14 MeVの中性子スペクトルを測定した。その結果本システムの有効性が確認された。アラニン線量計の使用可能性については、測定結果から1krad〜10Mradという広い線量域をカバー出来る事が示され、線量測定の非常に有力な方法であることが確認された。イオンビーム線量評価にはラジオクローミックフィルムを用いた。その結果、本線量計で十分線量の評価が可能であることが確認された。 種々の高分子材料に対する照射効果:先ずPMMAで調べた結果から極低温でも拡散によらない高分子材料中での電荷移動のプロセスが存在することが示唆された。一方、置換アセチレンのポリマーの内、芳香族アセチレンポリマーは、放射線に対する安定性は大きいことが確かめられた。また、ケイ素を含むポリマーには優れた耐放射線性が期待されたが、実験結果から明らかなように比較的容易に酸化分解することが確認された。またPEEK,Upilex,ポリイミドについて陽電子消滅により放射線照射効果の研究を行った。その結果、ポジトロニウム生成量の減少が観測されたが、これは構造上の変化によると考えられ、高分子の照射効果についての重要な情報を与えるものと期待される。
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