研究概要 |
核融合反応実験をはじめとする大量トリチウムの取り提いに際しては、その安全取り扱い、即ち貯蔵-供給-回収技術の確立が必要不可欠である。その為の一方法としてゲッター材の利用が検討されているが、貯蔵、供給あるいは回収材のさらされる環境はそれぞれ磯なり、現在までに開発されているゲッター材のみでは要求される性能を満たせない。本研究では、Zr-V-Fe合金ゲッタでの研究成果を踏まえ、添加元素の異なるZr系合金ゲッターについて、活性化ならびに水素同位体及び同位体水蒸気の吸蔵-脱離過程を調べ、添加元素の役割りを検討するとともに最適ゲッター材設計の為の基礎的知見を得ることを目的とした。 Zr系合金ゲッターの顕著な排気作用は金属表面の生成に対応し、その発現温度は300℃(Zr-V-Fe),400℃(Zr-Ni),500℃(Zr-Al)以上であることを見出した。この相違は酸化物及び炭化物の生成自由エネルギーならびに酸素及び炭素の拡散の活性化エネルギーの相違に基づくものと考えられる。吸蔵-脱離過程に関しては、水素同位体(【H_2】,【D_2】,【T_2】)及び同位体水蒸気(【H_2】O,【D_2】O,【T_2】O)の解離吸着及び表面会合反応が律速段階であることを明らかにした。吸蔵の活性化エネルギーは0.01〜1Kcal/mol(水素同位体)及び0.7〜3Kcal/mol(同位体水)で、水素脱離の活性化エネルギーは28〜35Kcal/molで添加元素により変化し、活性化過程と同様顕著な合金化効果が見出された。上記のゲッター材においては、水素同位体及び同位体水吸蔵の活性化エネルギーが小さく、吸蔵水素の平衡圧が極めて低いので、回収-貯蔵材として適している。また同位体水を吸蔵したゲッターを加熱すると水素同位体のみが脱離するので、トリチウム水からのトリチウムの回収に有用である。更にZe-Niにおいては、活性化温度を変えることにより同位体水を選択的に吸蔵する特性を示すことが知られた。
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