研究概要 |
本年度は試料として2種類のものを用いた。【◯!1】核融合特別研究超電導マグネット班で用いる共通試料である。Nbフィラメント745本、Nbバリアーブロンズ比2、銅-非銅比0.455、外径0.311mmφの構成をもつものである。【◯!2】厚さ0.22mmの純Nb板を第3元素を添加したCu-Sn合金板ではさみ真空ホットプレスにより圧着した板材である。合金の組成をCu-xat%Sn-yat%Mの形で表わすとx=7.0,y=1.0でMはTi,Hf,GaおよびInである。これらの試料を873〜1073Kの温度範囲で最大1.7Msまで焼鈍し【Nb_3】Snを成長させた。熱処理後、微細組織を調べると共に臨界電流密度測定を行った。得られた結果を要約すると次の3点となる。【◯!1】等温焼鈍の効果;共通試料について【Nb_3】Snの層厚は熱処理時間が長いほどかつ温度が高いほど大きくなる。結晶粒についても同様に増加する。一方臨界電流は時間と共に最初増加し極大に達したのち減少する傾向がみられる。これは解析の結果、時間と共に層厚が増加することと、結晶粒の増加によって巨視的ピンカが減少することとのかね合いによって起ることが明らかにされた。【◯!2】二段熱処理の効果;一般に高温で熱処理すると【Hc_2】は高くなるが、臨界電流は減少する。そこで低温で熱処理した後、高温で短時間熱処理することにより【Hc_2】の増加のみが期待できるかを実験的に検証したところ、ある限られた温度と時間を選ぶことにより、【Hc_2】の高い、臨界電流の大きな条件が得られることを明らかにした。【◯!3】第3元素添加の効果;巨視的ピンカは【Nb_3】Sn結晶粒径の逆数にほぼ比例するが、第3元素を添加するとこのピンカは変化する。In,Gaの添加によりピンカは増加するものの、Ti,Zrの添加により減少すること、【Hc_2】についてはその逆の傾向があることが明らかとなった。この巨視的ピンカの粒径依存性を定量的に解明するため理論的考察を行い、実測値が統計的モデルでよく説明できることを明らかにした。
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