研究概要 |
超電導マグネットの絶縁材料は、電界ストレス、磁気ストレス、機械的ストレス、温度ストレス、及び放射線照射の条件下でその性能を発揮することが要求され、電界ストレスに対する強度が主な特性評価指標である従来の機器に対する絶縁材料と比較して未知の厳しい環境下で使用される。このような超電導環境下における絶縁材料の電気的特性に関するデータは極めて少ない。著者らは、超電導マグネットの絶縁設計の基礎となる絶縁系の絶縁強度特性と絶縁破壊機構を解明する目的で、その構成要素である固体絶縁材料、冷媒及びそれらの複合系における絶縁破壊現象について一連の実験研究を行ってきた。このうち、昭和60度は、(1)圧縮応力下の二軸延伸PETの絶縁強度特性、(2)液体窒素中に部分的に浸された不平等電界ギャップ(PI相と記す)の破壊特性とSumoto効果に関する研究課題を中心に検討した。その結果、次のような成果が得られた。(1-1)直流絶縁強度は、PETの弾性変形領域では圧縮応力の増加とともに上昇し、塑性変形領域になると急激に低下する。(1-2)最大絶縁強度及びそれに対応する圧縮応力は熱処理温度によッて変化する。また、絶縁強度測定値のバラツキも熱処理温度によって異なる。これらは、IEEE Trans.EI-20,No.3に報告された。(2-1)Sumoto効果は直流と交流電圧印加の場合に出現するが、インパルス電圧印加の場合には出現しない。(2-2)直流電圧と交流電圧印加時において、短いギャップ長でガス密度が低いPI相の破壊強度は【GN_2】相の破壊強度よりも高い。一方、ガス圧力が高くなるとPI相の破壊強度は【LN_2】相の破壊強度とほぼ等しくなる。この特異な現象はSumoto効果によって説明できる。インパルス電圧の場合、ガス密度に無関係にPI相の破壊強度は【GN_2】相の破壊強度とほぼ等しくなる。すなわち、【LN_2】と【N_2】ガスの界面は、絶縁上の弱点とはならない。 これらは、IEEE Trans.EI-20,No.2に報告された。
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