研究概要 |
新しい電子供与体として1.3-ジチオール[4]ラジアレン(吉田)非対称ジチアジセレナフルバレン(小林啓二)、環状及び鎖状にアルキルチオ置換したTTF類(斎藤)を合成した。これらの電子供与体を用いた金属的な電荷移動塩の合成と物性測定を以下の様に各班員が行った。非対称TCFを電解酸化した3種の塩について結晶構造と電気物性(池本)の測定を行った。環状アルキルチオ置換体のBMDT-TTF,BEDT-TTF,BPDT-TTFの多数の電荷移動塩を合成しそれらの結晶構造(小林速男)を決定した。これらの塩の単結晶について反射スペクトルの温度依存性(黒田薬師)を測定し、相転移とバンド構造の変化の相関について研究し、X線散漫散乱(鹿児島)により相転移に伴う構造変態を明らかにした。またTeを含む分子を用いた電荷移動塩も合成し、BDMT-TTeF(池本),HMTTeF(松崎)のラジカル塩の単結晶を得た。その他フタロシアニンの電荷移動塩(黒田薬師)とNi【(dmit)_2】の電荷移動塩についても金属的挙動を示す物質を見出しそれらの結晶構造を決定した(佐佐木)。無機一次元導体については混合原子価白金錯体(辻川)の電気物性とバナジウムブロンズ(長沢・鹿児島)におけるバクポーラロンの相図に関する研究を行った。導電性高分子に関しては一次之炭素鎖カルビンと液晶を溶媒とした高配向ポリアセチレン膜の合成(白川)に成功した。ポリアセチレンの構造については偏光XANES(藤川)を詳しく解析する事によりドーパントである臭素の近傍の構造を明らかにし、物性についてはNMR、ESRによるソリトンダイナミックス(久米)の研究を完成させた。その他導電性高分子のポリチオフェンとポリアニリンについてラマン分光法(原田)による研究を行い、共役鎖長に関係するいくつかのキーバンドを見出した。理論的研究は一次元系におけるアンダーソン局在(福山)とスピン-パイエルス転移(福山)更に有機強磁性体(那須)に関する研究を行った。
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