研究概要 |
遺伝子解析の容易な多細胞菌類より、体制のより複雑な動植物に至る各種生物を用い、分化発生に異常をもつ突然変異体の解析から、パターン形成に関与する遺伝子の構造と機能の研究を行った。 1.パターン形成に関する遺伝子作用の研究 糸状菌糸の形態決定に関与する環状アデニル酸代謝制御遺伝子の役割を明らかにし、また、細胞分化に対するプラスミドの関与を見いだした。細胞系譜の明らかなヒドラでは、頭部形成促進及び抑制能力の形態形成における役割を示した。高度に精密な体制構築にはたらく遺伝子作用を解析するため、ショウジョウバエの卵巣抗原に対するモノクローン抗体のライブラリーを作り、その中から体節パターン形成と関連をもつと考えられる抗原と反応するものを選択した。また、カイコでは体節分化に異常をおこす発生異常突然変異体では野生型と異なリホメオボックス配列が認められないことが発見された。 2.クローン化した遺伝子の構造解析 ショウジョウバエでは間接飛翔筋アクチン遺伝子のクローン化を行い、その一端に点突然変異が生じると熱ショック蛋白質遺伝子が異常発現することを見いだした。カイコでは絹糸腺のフィブロインとセリシン遺伝子のクローン化を行い構造を決定した。また植物ではコムギのヒストン遺伝子の一次構造を決定し、動物のヒストン遺伝子との比較を行った。ソラマメ,エンドウ,ニンジンでは高頻度反復DNA配列をクローン化し、分子構造を決定した。このようなDNA反復配列の多様化した構成パターンからゲノムの変遷過程が推定された。 3.遺伝子発現機構の研究 カイコのフィブロイン遺伝子の転写に必要な機能領域の塩基配列を決定し、この領域に反応する因子を検出した。コムギのヒストン遺伝子では遺伝子の上下流に転写調節に関与する塩基配列が見出された。
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