研究概要 |
今年は最終年度にあたり、1つの総括班と、それぞれに今までの公募研究の中からもっとも適当と思われる課題を1〜2件加えた9つの計画研究班を組織して、3年間の研究をまとめた。これらの総合的な研究活動によって得られた成果のうち特に重大と思われるものは次のごとくである。1.本特定研究がスタートした当時、非常に遅れていた植物細胞のベクター系は、病原ウイルス,ウイロイド,葉緑体,Ti,Ri,プラスミドのそれぞれにおいて開発が著しく進展し、中には形質転換個体で正常に開花結実して後代への伝達が検討されて、有用作物の育種への利用の基礎を固めた。2.ヒトX染色体の遺伝子ライブラリーを作成し それについて適切なRestriction Fragment Length Polymorphismマーカーを求める研究がすすんだ。3.遺伝病の解析で、健常細胞から抽出したDNAを異常細胞に導入してその性質を正常型に形質転換させ、このような形質転換活性を指標にして、遺伝子の産物が不明の場合でも目的とする遺伝子をクローン化出来ることを原理として、遺伝病患者に欠損している機能に関する遺伝子を分離する方法を確立した。これは今後、遺伝病の本熊を解析する上に有用な手段となるものと考えられる。4.常染色体優性遺伝をする家族性アミロイドニューロパティーの本熊と考えられるプレアルブミン遺伝子の一塩基遺換を明らかにし、それにもとづく簡単な発症前診断法を得た。5.カイコ多角体ウイルスのベクターとしての利用をみとめた。本総括班はこれらの研究間の交流を密にするため、2回の班会議開催、3回のサーキュラーおよび班員名簿の発行、公開シンポジウムの開催、DNA構造に関するデータベースgENESの整備、「染色体レベルにおける形質発現の調節」に関する小集会1回を開催した。またこれらの研究のため高速液体クロマトグラフシステム1式、および超低温槽1台その他を購入して、班員の便に供した。
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