本特定研究は新超伝導物質開発と超伝導発現機構の解明を目的とするため、対象物質および研究技法の異なる5班で構成されている国際的にも珍らしい研究組織である。総括班は、各班にその独自性を発揮させるとともに、本特定研究の統一性を保持するための中枢の役割を果たすものである。60年度は6月29日に第1回総括班会議を開いて本年度実行計画の検討を行ない、9月30日の第2回会議では更に討論を深めるとともに、61年度研究計画の準備作業を行なった。11月18日の第3回会議で61年度研究計画を一応仕上げ、また総括シンポジウム開催の準備作業を行なった。 総括班の最重要事業である総括シンポジウムは61年1月23〜25日の3日間にわたり、一般公募の分担者も加えて開催され、本特定研究活動全体のチェック・アンド・レビューが行われた。なお、本特定研究に対する海外、とくに米国の関心が高く、60年5月米国で開催された超伝導国際会議では本特定研究代表者として中嶋が概要の紹介を乏われて行ない、これが契機となって、1月の総括シンポジウムには、米国の代表的科学者6名がNSFの渡航費援助を受けて参加、講演・討論を行なった。昨年度と同様、総括シンポジウム・レポートを英文で刊行し、本特定研究の成果を広く海外にまで報告する。 なお、この総括シンポジウムで分担者大串(鹿児島大)から【Nb_3】Geの自然酸化物が44Kという曽ってない高転移温度をもつ可能性があるとの報告があり、内外に衝撃をあたえた。総括班としては分担者田中(東大)と2名の若手分担者を大串研究室に派遣し、討論を行わせたが、実験方法に問題があることを双方で認めあった。 61年2月21日、61年度研究計画を最終的に確認した。
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