研究概要 |
今年度は運動ニューロン(MN)の特異性と、運動ニューロン疾患(MND)の特異性の検索の2つを主な目標とした。 MNの特異性について出口はcholine acetyltransferase(CAT)単クローン抗体による免疫染色で、ラット脳神経核【III】,【IX】,【VI】と【V】,【VII】,【XII】の染色様式は違い、後者は脊髄MNに近似すると述べ、佐竹は脊髄神経節細胞のneurofilament(NF)蛋白質の高分子量成分に特異的な単クローン抗体でMNDの脊髄を染色すると、対照では染らないspheroidとMNが染ることを明らかにした。林はMNDの腰髄MNの乳酸脱水素酵素のヒストグラムは、高活性群が残存して低活性群が減少し、両者が同等に存する対照例とは異ることを明らかにし、加藤はMNDの腰髄MNのCAT活性を測定して、対照例よりも低い傾向を示すことを報告した。萬年はMNDでよく残存するOnuf核神経細胞を計測して、対照よりも面積が小さく、神経細胞内にhyaline inclusionを認めたと述べた。金光は鶏胚頸髄灰白質のシナプス形成の電顕的観察と、Golgi鍍銀法による軸索側枝の観察から、灰白質のシナプス形成は二次側枝に起ると考えた。長谷川は鶏刃脊髄の大型細胞はMNDの血清により、神経突起の伸展が抑制されると報告した。 MNDの特異性について、中西はMNDのF波は対照例よりも有意に出現頻度が低く、F/M比が高く、持続時間が短く、位相数が少いと述べ、塚越は筋培養による、軽度〜中等度の筋変性を示すMNDの筋再生は良好で、対照例と筋変性がないか高度なMNDの筋再生は不良なことを示した。吉野は【N_2】Oにより、ラット中枢神経のcystathionint.の著増とtaurineの一過性増加を認め、MNDにおける葉酸サイクル異常を推察した。八瀬は低Ca,Mg,高Alの条件下でサルを飼育し、1年後脊髄MNの虎斑融解、axonal swelling、ライソゾーム増加、NFの走向異常を認めたが、骨格筋に著変はなかった。
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