研究概要 |
刺激応答時の最も重要なセカンド・メッセンジャーの一つであるカルシウムイオンが、どのような機構で細胞内に動員されるかを明らかにするのが本研究の目的であるが、このカルシウム動員機構は細胞の種類によってそれぞれ異っている。本年度は、心筋,平滑筋において重要な役割を果たしている細胞膜の膜電位依存性カルシウムチャンネルと、細胞内の主要なカルシウム・ストアである小胞体におけるカルシウムの動態に主として焦点をしぼって研究を行った。 1)心筋細胞膜のカルシウムチャンネルは交感神経の刺激Fにその活動性を高めることが分っているが、入沢は、パッチ・クランプ法でカルシウムチャンネルの活動を電気的に測定しつつ、細胞内にC-AMPまたは燐酸化,脱燐酸化酵素などを適用する実験によりチャンネルのC-AMPによる燐酸化がその活性化機構であることを証明した。 2)筋小胞体にはカルシウムイオン自身がカルシウムを放出させる機構が存在しているが、山本はこのカルシウム放出機構がATP存在下に、おそらく燐酸化を介して不活性化されることを見出し、この機構が生理的制御を受けている可能性を示唆した。この機構は骨格筋で発見されたものであるが、平滑筋小胞体にもこの機構が存在することを遠藤は明確に証明した。また、平滑筋および血小板の生理的刺激によるカルシウム放出が骨格筋とは違ってカルシウムによるカルシウム放出の抑制薬で抑制されることが示され、これらの細胞におけるこの機構の生理的役割の可能性はさらに追究する価値がありそうである。また、最近注目されているイノシトール三燐酸の小胞体に対するカルシウム放出作用、放出と並行して働くカルシウムポンプによるカルシウム動態の制御、さらには、まだあまり解析の行われていない諸種細胞についてカルシウム動員機構を解析する前段階としてのカルシウムによる応答反応の解析などを行った。
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