研究概要 |
プロテアーゼを中心としたカルシウム依存性酵素をとりあげ、活性制御機構の分子レベルの研究、タンパク質代謝に対するカルシウムイオンの効果、プロテアーゼが触媒する限定分解によって引きおこされる種々の酵素やタンパク質の機能の変換の分子機構の解明、等を目ざし大別して以下の4項の研究を行った。 1.中心課題のカルシウムプロテアーゼに関しては、cDNAのクローニングにより、ヒト、ウサギ、ブタの酵素について80Kサブユニットや30Kサブユニットの構造を明らかにし、両サブユニットのC末端側に各1モルのカルモデュリン様カルシウム結合タンパク質ドメインが存在することを決定した。また、このプロテアーゼの活性を制御する重要な因子であるインヒビターの研究を進める一方、カルシウムプロテアーゼの生体内機能の解明をめざし、特異抗体を使った細胞内分布の解析、血小板における機能の解析等についても多くの基礎的な知見を蓄積しつつある。 2.カルシウムは血液凝固系因子の活性化においても極めて重要で、その活性化機構の究明のため種々の凝固系因子を精製し、その構造を解析した。特に、プロトロンビンのカルシウムを結合するγ-カルボキシグルタミン酸のドメインが、N末端側に存在することを証明した。 3.ウニの精子のアミノペプチダーゼ、ジャガイモのホスホリラーゼキナーゼのカルシウムによる活性化機構の検討も行った。また、酵母からカルモデュリン様のタンパク質を精製し、その性質を検討した。 4.ラットのGTP結合Nタンパク質を介する情報伝達系において、【G_5】,Gi,【G_o】タンパク質のcDNAをクローニングし、そのアミノ酸配列を決定し、この系を用いて、GTP結合タンパク質やカルシウム、カルシウム結合タンパク質などが情報伝達系でどのように作用するかの解析をはじめた。
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