研究概要 |
各種神経伝達物質に対応する受容体機構を取り上げ、その特異性を比較検討すると共に、その機能調節機構の比較検討、更にはこれらの各受容体に共通する事項は何か、そしてこれらの知見を基盤として、新しい神経活性物質探求の受容体レベルにおける方法論の理想像は何かを明かにすることを主目的として研究を進めた。本年度における主要な成果は下記の如くである。 1) 脳内GABA受容体は膜レベルにおいては燐脂質とラジカルによる活性化を、一方受容体レベルにおいては分子内の糖鎖により抑制的調節を受けている。2) 嗅球摘出によるmuricide行動の発現には脳内のノルエピネフリン及びGABA作働性ニューロンの機能変化が関与している。3) カルシウム誘発性カルシウム放出はプロカインなどの局所麻酔薬により抑制される。4) セロトニン受容体の結合活性は【Mn^(++)】などの二価陽イオンにより増強される。5) 心臓のアドレノセプターには種差があり、例えば兎ではαとβの両受容体が存在するが犬では後者のみが検出される。6) 後シナプス性【α_2】受容体の特性には 大きな組織差が存在する。7) 三環性抗うつ薬の長期投与は脳内オピオイド受容体の機能に変化を与える。8) プロテインキナーゼCは【Ca^(++)】の動態に対する影響を介して、アセチルコリンなどの伝達物質の放出調節に関与している。9) ある種の受容体の活性化は膜燐脂質の代謝回転の促進を介して情報伝達を行う。10) アセチルコリン・ムスカリン受容体にはアンタゴニストに対する親和性の面から3種類(超高親和性,高親和性,低親和性)があり、GTP結合蛋白の調節を介して相互に変換可能である。11) 神経成長因子には特有の受容体がある。12) アセチルコリン・ムスカリン受容体はGTP結合蛋白により活性調節を受けている。
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