研究課題/領域番号 |
60127001
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研究種目 |
特定研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田 啓也 東北大学, 医, 教授 (20046907)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
20,000千円 (直接経費: 20,000千円)
1985年度: 20,000千円 (直接経費: 20,000千円)
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キーワード | Glucore-b-phosphatase / Glucore-b-phosphate translocase / Glycogen storage disease type 1 |
研究概要 |
糖原病【I】型(von Gierke病)は比較的頻度の高い先天代謝異常症であり、その特徴的臨床像から50年前に既にその報告があり、30年前にCoriちによって肝のglucose-6-phosphatase(G6Pase)の欠損に基づくことが証明された。しかしその後臨床的にvon Gierke病と診断された例で実際に肝のG6Pase活性を測定してみると正常活性を示す例がしばしば見出され、糖原病【I】bないし仮性【I】型と呼ばれその原因は不明であった。 吾々は糖原病【I】型から得られた新鮮肝組織を用いて、intact miorosome分画とdetergent處理により膜を破壊したdisnipted microsome分画の双方に於てG6Pase活性を測定した結果、糖原病【I】型には2つの型があることを見出した。すなわち、【I】a型ではG6Pase活性はintact microsome及び disnipted microsomeの両者に於て極めて低値を示しG6Pase自体の欠損を示したが、【I】b型ではintact microsomeではG6Pase活性は著明な低値を示し、disrupted microsomeでは正常活性を示した。この所見は【I】b型ではミクロゾーム膜のG6P輸送機構に障害があることを示唆するものである。さらに分離した肝ミクロゾームを用いてメンブラン・フィルター法によりG6Pのミクロゾームへの膜輸送を直接測定する方法を開発し、糖原病【I】b型ではG6P輸送機構が欠損していることを証明し得た。さらにpyro-phosphatase活性を調べた結果、【I】b型に於て該酵素活性がintact microsome及びdisrupted microsomeで正常であり、換言すればミクロゾーム膜にはG6P,pyrophosphateに対する別々の輸送機構が存在することが示された。以上の研究成果により、糖原病【I】b型はミクロゾーム膜のG6P 輸送機構の遺伝的欠損に基づくことが明らかにされた。そしてまた本症の累索の結果として肝ミクロゾーム膜におけるG6Pに特異的輸送機構の存在が証明されたと云える。本症は細胞内の小器官の膜輸送機構の障害に基づく遺伝病として始めての例である、遺伝病に新しい疾患カテゴリーを提示したものということができる。
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