研究概要 |
この研究班は、疾患モデル系統を育成する側と、それを乳幼児の先天性代謝病の研究に利用する側とに大別され、両者の協同研究に特色がある。疾患モデル系統育成者側としては、近藤,富田,信永,山村班員が主体的に研究を進めた。本年度、近藤は無毛症ラット等疾患モデルラットの開発を、富田はケトン尿症マウスの系統育成をおこなった。信永は、ムコ多糖症VI型のモデルといわれる代謝異常のネコを米国のペンシルバニア大学より導入し、その繁殖の研究を開始した。これらの疾患モデル動物育成の方法は、自然突然変異として生じた偶発的な変異を見出して利用するものである。これらに対して、X線やガンマン線を動物に照射して人為的に突然変異を誘発する方法も富田が開始した。また、組み換えDNA技術により、哺乳類の遺伝子を単離増殖して初期胚に注入して、代謝病モデル動物を作成する研究を山村が担当している。疾患モデル動物を先天性代謝病の研究に利用できるか否か検討する側としては、ニーマン・ピックマウスを用いる研究を北川班員と桜川班員が実施して成果をあげつつある。野沢班員は無アルブミンラットを用いて、臓器移植による治療の研究を進め、野口班員は、成長ホルモン単独欠損マウスに用いてホルモン異常症の治療の研究をおこなった。衛藤班員は、ヒトのKrabbe病のモデルとみなされるTwitcherマウスの病理的検討をおこない、辻班員は、Jimpyマウスをミエリン形成の研究に利用することを検討した。高坂班員は、ラット・マウス間の大脳移植の研究をおこなった、これらの研究は、すべて予定通りに順調に進んでいるが、用いた動物がマウスとラットに限られているので、比較動物学的観点から動物種を増加させる必要があった。そこで小浜班員は筋ジストロフィー症の鶏を用いて、鳥類がヒトの疾患モデルとして有用であることを示した。
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