1.研究目的 先天性代識異常症は、その原因が1個の遺伝子の突然変異であると考えられる場合が多いが、一般に症状は多面的にあらわれる。近年分子機構の解明が進んだDNA修復欠損遺伝病についても、分子レベルでの障害と臨床症状との関連は明らかでない点が多い。本研究はDNA修復欠損遺伝病の中でもっとも研究が進んでいる色素性乾皮症を主な対象として、この病気の代表的症状である皮膚障害と、この病気の患者の的事数にみられる神経症状とについて、DNA修復欠損との関係を明らかにすることをめざす。研究代表者と5名の分担者のうち4名(佐藤、佐藤、川島、三枝)は臨床医で、主に患者の正確な臨床像の把握をなるべく多数例について行ない。武部、滝本は患者由来の培養細胞を用いてDNA修復欠損の確認を行なう。 2.研究成果 従来色素性乾皮症患者のうち、0-9歳の幼少年者はほぼ全員DNA修復能が著しく低く、かつ神経症状を伴っていた。ところが今年度の調査で集った253例の色素性乾皮症患者中、若年者(0-9歳)で、DNA修復能が低い者の中に神経症状のない例、およびDNA修復能が比較的高くて神経症状のない例が合計9例みつかった。その内訳は、相補性群でC群2例、F群2例、バリアント型2例、…定2例の8例までが神経症状がないことと分子機構の間に矛盾がないと考えられる患者であった。…定2例はいずれも高修復能であった。1例だけはA群と判定されており、神経症状が軽症である可能性が考えられるが不確定である。文部省海外学術調査によって入手した韓国と中国の患者について同様の調査を試みたが、細胞の入手が不十分であったため、分子レベルの研究ができなかった。しかし韓国の色素性乾皮症26例には神経症状が1例もないこと、中国には16例中3例の神経症状があることがわかった。ひきつづきこれら細胞のDNA修復能の測定をめざしたい。
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