研究概要 |
リソゾーム酵素異常症は、リソゾーム酵素の合成やその修飾過程の異常にもとづき発症する遺伝性代謝異常症である。その病因や病態代謝を明らかにすべく、リソゾームやリソゾーム酵素および蓄積物質の動態を機能面、形態面から観察し下記の成績を得た。 1)小川らは、ラット肺胞マクロファージの電子顕微鏡的観察にもとづき、リソゾームに隣接して、5〜7nmのアクチンフィラメントや10nmのフィラメントの存在を確認し、これらが細胞内におけるリソゾームの移動や包埋機構に重要であるとの結論を得た。 2)鴨下らは、脳微小血管周囲に局在し、螢光性顆粒周囲細胞に存在する顆粒の分布、大きさおよびそれに含まれる脂質が、各脂質代謝異常症において、特異性があり、マーカー細胞のひとつになりうるとの観察を報告した。 3)加藤らは、ラット肝培養細胞をもちいて、リソゾーム酵素の代謝に重要な役割りを示すタンパク分解酵素の生合成やその後のプロセシング、分子構造を明らかにした。4)飯田らは、シアリドーシスの患者から得られた培検肝および脳組織から抽出したシアル酸含有糖脂質であるガシグリオシドのパターンには、本症に特異的な変化をみいだし得ず、組織像の変化はガングリオシド代謝の異常のみによるものとは考えられないとの所見を得た。 5)宮武らは、ヒト胎盤からシアリダーゼ,β-ガラクトシダーゼを分離し、庶糖密度勾配法にもとづき、シアリダーゼは、β-Galの複合体よりも高分子であるとの所見を得た。6),垂井らはTリンパ球のα-グルコシダーゼの酵素学的性質についての検討を加えた。 7)薮内らは、ムコ多糖蓄積症での In vivoにおける蓄積物質の代謝を追跡し、異常細胞では蓄積の増加異化過程の障害があることをみいだした。
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