研究概要 |
1.研究目的 免疫遺伝学は近年分子レベルの研究をも包含し、著しい発展を遂げ、癌、自己免疫病その他の難病をはじめ、医学生物学領域の多くの問題に深い係りをもつようになったが、その基盤はコンジエニック系統を中心とする遺伝的に純化された実験用マウスによって支えられている。我が国においてもこれら一群のマウス系統を用いた免疫遺伝学研究は近年大きく進展したが、これに伴ってこれら免疫遺伝学研究用マウスの基準となる系統を維持し、研究に使われる系統の特性が基準どおり正しく保持されているかどうかを監視することが、実験的研究の基礎として不可欠の要件となってきた。このため本研究ではコンジェニック系統をはじめ各種の免疫遺伝学研究用マウス系統の維持と遺伝的統御システムの設定を目標に班の活動を行った。 2.研究成果 免疫遺伝学研究用マウス系統としてB10,A,C3Hを遺伝的背景とするH-2コンジェニックマウス40系を維持繁殖し分譲も行った。遺伝的統御システムのための手技の検討も広範な標的に対して進められた。H-2については20種のモノクロン抗体の反応性のパタンをパネル系統を使って検定した。B細胞刺戟因子に対するB細胞の応答性もモニターの指標として検討された。Ly抗原に対する細胞障害性試験の再現性を高めるため補体の吟味や標的細胞の撰定に関する基礎的な研究が行われた。免疫グロブリン遺伝子も多型性に富むので、これを用いたモニターの方法がモノクロン抗体およびc-DNAによる制限酵素断片の大きさの多型の利用によって進められた。Ia抗原に対してもモノクロン抗体と細胞障害試験によるモニター法が検討された。H-2に連鎖する補体系の遺伝子のモニタリングな免疫学的な方法の他DNAプローブを使ったサザン法の利用が研究された。多数のLy抗原遺伝子座をモニターの対象とする可能性が検討された。受精卵の凍結保存法の検討はさらに続けられ、従来の機械手法を改良した。
|