北海道から九州までの全国8ブロックの研究者が産業技術記念物の実態調査にでかけた。この実態調査に趣ては、統一の調査カードを作成し、その各々に資料の所在地、管理者、及び製作者、製作年等々を記入するようになっている。現在、全国の研究参加者がこのカードに基づき、フィールド・ワークをつづけている。尚、この実態調査にあたっては、資料に関する様々な情報、具体的には、入手経緯、資料使用にあたっての諸注意事項及びこれにまつわる興味深いエピソードまでをも収集している。この産業技術記念物実態調査カードを数多く集め、これを整理することにより、日本近代に於る産業技術の発展過程が、具体的かつ実証的に明らかにされる。現在は、そのための基礎作業に入っているという段階である。京都大学では、このフィールド。ワークを円滑に進めるためのアンケートを行なった。五里霧中の実態調査では、効率も悪いので、大まかな資料所在情況についての羅針盤が必要となる。そこで、全国の製造企業に対して、産業技術記念物の所在を問うた。具体的には、製造企業を24業種に分類し、各々の業種に応じたアンケート冊子を作製の上、これを該当企業に配布したのである。(昭和59年)総計4000通。今年度は寄せられた回答1096票を分類整理し、報告書『近代日本産業技術の実態調査及びその発展過程に関する実証的研究【I】』を刊行した。24業種それぞれの産業記念物が、どの企業にどの様な状態で残存しているかは、この報告書により容易に読みとれることとなった。また産業記念物の江戸時代から現代に至るまでの時代ごとにおける残存状況も、これにより明確に判読されるに至った。この成果は、全国の調査員たちにも行き渡っておりフィールド・ワークの現場においてもおおいに役立っている。尚、本年度には、これと同趣旨のアンケート調査を、(社)日本博物館協会の協力を得、全国の博物館資料館に対して行なった。
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