昭和60年度には、59年度におこなわれた沖縄トラフの研究にひき続いて、日本海(大和海盆)の研究航海を実施した。大和海盆が選ばれたのは、日本海盆の大部分が現下の国際情勢では観測航海が不可能であることに加えて、大和海盆の海底地殻が海洋性ではなく、しかも海盆としての形成が日本海盆の形成より新しいのではないかという見解がある点から、これらを検討することが極めて重要と判断されたためである。 研究航海は59年度と同じく、若潮丸(日本サンヴェージKK)と東大海洋研淡青丸との連動によって、7月中旬〜9月下旬にかけて行なわれ、地形、地震(OBS20台および音波探査、人工爆破を含む)地磁気三成分、地殻熱流量、底質採取などが総合的に実施された。好天に恵まて、多大の成果を治めたが、そのデータは現在、鋭意解析中である。現在までに得られた予備的解析によると、 1.マントル最上部のP-波速度は8.0Km/S以上だが、地殻の厚さは約20Kmであり、地殻内の速度構造は海と陸の漸移型である。 2.大和海盆中の海山の多くは逆帯磁を示すが、いづれも偏角は南比方向であって、海山生成後の海盆の回転はみとめられない。 3.大和海盆の熱流量は約100mW/【m^2】で極めて一様であるが、日本海東縁部では76〜136mW/【m^2】という巾を示した。一方、日本海中部地震の震源域においては、ガス噴出徴候とともに約250mW/【m^2】に達する異常熱流量が観測された。 4.大和海盆中の海山から得られた玄武岩は、海嶺的性質を持ち、6:Maの年令を示す。 さらに詳しい解析によって、大和海盆の生成について重要な知見が得られるであろう。
|