研究概要 |
本年度得られた研究成果の要約は次の通りである。 1.電解重合により生成した電気化学的に活性な膜被覆電極(ポリ(N-メチルアニリン),ポリ(O-フェニレンジアミン),ポリ(1-ピレナミン)などの薄膜被覆電極)の電気化学キャラクタリゼーションのために、(【i】)電極/膜界面での不均一電子移動過程および(【ii】)膜内での均一電荷移動過をノーマルパルスボルタンメトリーにより定量的に調べた結果、(【i】)の過程は通常の未被覆電極での溶存化学種の電極反応と同様にButler-Volmer式に従うこと、そして(【ii】)の過程はFickの法則に従う拡散過程であることがわかった。2.電気化学的に活性な電解重合膜被覆電極を用いると、溶存レドックス化学種の酸化・還元反応が触媒および媒介されることがわかった。3.N,N-二置換アニリン誘導体を酸性水溶液中で電解酸化重合することにより、アイオネン構造を有するポリカチオン性ポリマー薄膜が電極上に生成することを見い出した。4.Fe【(bp)(^4-_3)】(bp:バソフェナントロリンジスルホナート)錯体を電解溶液中に共存させてN,N-二置換アニリン誘導体を電解すると、膜生成と同時に錯体が膜中に取り込まれることがわかった。この膜被覆電極は、エレクトロクロミック特性(還元体:赤色、酸化体:無色)を有することがわかりその特性評価を行なった。5.アミノ基を有する縮合多環式炭化水素(1-ピレナミン、1-ナフチルアミン、1-アントラセナミンなど)のアセトニトリル溶液中での電解酸化重合反応の初期過程は、電極表面でのカチオンラジカルの生成、これらのカップリング反応、生成した二量体のさらなる電極反応によるカチオンラジカル生成…となっていることを電気化学的パルス測定法により明らかにした。6.フェノールおよびその誘導体の電解重合生成物の構造、電気化学的挙動および特性は、電解条件によって大きく変わることがわかった。
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