研究概要 |
1.生体系,界面,ポリマー等でみられる光励起分子の緩和は非指数関数的であることが多。我々は微視的環境場で生起する光化学、光物理現象の解明に、新しい研究手段として、顕微鏡視野下で蛍光寿命を単一光子計数法により測定する方法を開発してきた。不均一場では、本来場所毎に蛍光寿命が変化するのであるから、本法を更に発展させるには、顕微鏡視野下で提えられる領域全部について測定することが望ましい。このような観点から、ストリークカメラと顕微鏡を組合せた測定法により、蛍光寿命を通して微視的分子場の画像化の可能性を探った。 2.分画能の基本的検討として、寿命の違いを通してどの程度微小領域が区別できるかを、種類の異なった色素を含む多層フィルム(各厚み3μm)のモデル系を用いて、顕微鏡下で測定した。その結果、水平及び深さ方向ともに3μmの場所の違いを検出できることが容易なことがわかった。ストリークカメラと組合せて、5〜10秒の測定時間でこのような多層フィルムの縦断面の各領域からの寿命を測定することに成功した。得られた結果を、場所vs.蛍光寿命という2次元的表示をしてみると、明瞭に、蛍光寿命による画像化、(即ち多層フィルムの形状)ができていることが示された。このような基本的検討から、本法が微視的領域にある光励起分子の研究法として極めて優れたものであることがわかった。是非ともこのことを特筆しておきたい。 3.現在、本法を具体的なサンプルについて応用しているが、その例は、【i】)ポリマー中の不均一色素濃度による減衰の歪み、【ii】)植物細胞膜、【iii】)結晶上に蒸着又は塗付した色素の不均一蛍光現象等がある。
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