研究概要 |
1.研究目的。情報変換機能を内蔵する有機薄膜を分子レベルから設計構築する目的で、ポリペプチド骨格の規則性2次構造上に多環芳香族原子団を強制配向させ、更にラングミュア・プロジェット法によるポリペプチド性新有機薄膜の合成法の開発を試みた。 2.結果。2-1,【3_(10)】-ヘリックス型ペプチドの合成と性質。多環芳香族原子団をポリペプチドのヘリックス構造軸上に一軸配向させるにはα-ヘリックスより【3_(10)】-ヘリックスの方が有利であると考え、アミノイソ酪酸(Aib),ピレニルアラニン(Pyr),およびアラニン(Ala)から成る18-ペプチド、Boc【(Ala-Pyr-Aib)_6】-OBz1を合成した。先に合成した両親媒性α-ヘリックス型21-ペプチドと異なり、クロロホルム等有機溶媒に易溶であった。メタノール中円二色性スペクトル測定の結果、ピレン環の複数の吸収帯に励起子分裂が認められ、少しねじれた近接配向状態を作り出すことができた。水面展開による薄膜化によって更にピレン環の組織性を高める可能性が生じた。 2-2.平面β-シート構造中で芳香環を配向させるため、フェニルアラニン(Phe)の側鎖をステアロイルアミノ化し、更にグリシン(Gly)と組み合わせたジペプチドエステル、Phe(NHCO【C_(17)】【H_(35)】)-Gly-OMeを合成した。これは水面に展開し、単分子膜となることがわかった。表面圧-面積曲線はpHにより大きく影響を受けることもわかった。更に大きな複素環を含むカルバゾリルデシルアミンを側鎖に結合したアスパラギン酸(Asp)と他のアミノ酸から成るジペプチドエステル、Asp(【C_(10)】【H_(20)】Car)-Gly-OMe等を合成した。これらの重縮合体を調製したが有機溶媒に不溶となった。赤外吸収スペクトルより、ポリマーは逆平行β-シート構造を形成していることがわかった。引続き親水性アミノ酸の導入による両親媒性β-シート構造のペプチドの設計合成に発展させている。
|