研究概要 |
ブロンズMxTOn(M:アルカリ金属原子、T:遷移金属原子)やその数似系であるTn【O_(3n-1)】等の導電性化合物を作成し、その低次元伝導性、電荷密度波(CDW)、超伝導等を調べた。例としてCDWの滑り運動の詳細な考察を行なった事等が挙げられるか、特に金属的状態を保ちうる限界ぎりぎりまで電子格子相互作用が強い、強結合電子格子系金属の開拓へむけて努力を払ってきた事が特徴である。これにより従来の弱結合超伝導とは異った性質をもつ超伝導体の発見等へむけて種々の理解が得られた。研究は低温における通常の電気的測定によるもの、磁気共鳴やラマン散乱に関連したもの等いろいろであるが、X線回折、中性子散乱手段が主に利用された。本計画は研究費申請後に代表者の転任があったのでその実行においていろいろな変更があった。特に低温設備の付いたX線4軸回折装置を本研究費とは独立に購入できたので、それと関連した変更があった。 具体的になされた研究の成果を列挙してみると.1.【K_(0.3)】Mo【O_3】,【Rb_(0.3)】Mo【O_3】の電場下での滑り運動の直接的観察とその確認、2.【(TaSt_4)_2】I,【(NbSt_4)_2】IのCDW転移に伴なう一見奇妙なTAモードの凍結の説明に関連して中性子非弾性散乱による直接確認、3.【Mo_8】【O_(23)】のCDW転移の発見とその低温構造の決定、これにより高い転移点をもつ超伝導体として興味のもたれるBa【Pb_(1-x)】Bix【O_3】に見られるものと類似の歪みが見えた、4.【Li_(0.9)】【Mo_6】【D_(17)】における異常な低抗の振舞と超伝導出現に関する詳細な研究及びこの物質と【Na_(0.9)】【Mo_6】【O_(17)】の構造決定、5.【Mo_9】【O_(26)】,【Mo_(10)】【O_(29)】の単結晶作成と構造変化の研究、 さらには6.これら全体を通してみたCDWと超伝導の競合に関する系統的理解等が進められた 等々の事柄となろう。
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