研究概要 |
1.超伝導転移温度Tcは膜厚に依存するのでスパッター膜を作る場合、膜厚を制御する必要があり膜厚モニタ(日本真空社製)が購入された。 2.パラジウムターゲットを用い、アルゴンガス中に適当量の水素ガス(【H_2】)を導入しPdHxスパッター膜を作製した。水素ガスをアルゴンがスに対して相対的に増加させていくとスパッタリング速度が遅くなり同じ膜厚の試料を得るのに時間が長くなる。このため基板の温度もそれぞれ異っているものと思われる。 3.水素ガス(【H_2】)を10%〜100%まで変化させて作製されたPdHxスパッター膜の電気抵抗が測定されたがいずれの試料も1.4K以上で超伝導を示さなかった。これは水素原子が十分な量(X>0.7)パラジウム膜に侵入しなかったことを意味する。原因としてはスパッター時間が長くなると基板の温度が高くなるためと考えられる。基板の温度のコントロールが必要である。 4.ニオブをターゲットとして水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を用いてNbHx,NbDxスパッター膜を作製し、電気抵抗の測定によりTcの変化を調べた。(1)TcはNbHx,NbDxともに水素ガス(【H_2】,【D_2】)の増加により減少する。(2)これらの膜のX線回折から格子定数【A_0】を測定したところ水素原子の侵入の増加とともに【A_0】は増加する。このことに対応してTcが下っていることが分った。(3)吸収された水素の濃度の決定は重要なことであるがまだ十分できていない。現在試料の加熱により脱離してくる水素原子の量を質量分析器で分析し濃度を決定することを試みている。(4)水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を導入して作製されたスパッター膜で格子定数が等しい膜同志のTcを比較すると重水素が吸収された方が明らかにTcが下ることが見い出された(同位元素効果)。
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