研究課題/領域番号 |
60213006
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研究種目 |
特定研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝夫 京都大学, 理, 助手 (00025363)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1985年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 超伝導 / 薄膜 / 相転移 / トンネル分光 / 量子凝縮相 / 磁性超伝導体 |
研究概要 |
1.実験の方法;100Å以下の清浄薄膜の単層、及び多層長周期構造膜を製造するため、二連電子銃を蒸着源とし、新たに4台の膜厚計を設置し、蒸着装置の改造を完了した。試運転に入っている。NECのPC-9801型計算機を用いたデータ収集装置を完成し、大型計算機にデータを収納し、トンネル・スペクトルの計算手法を確立した。 2.実験の結果;強結合超伝導体である遷移金属超伝導体を調べる前に、弱結合の典型であるアルミニウム超薄膜におけるスピン常磁性効果を調べた。非清浄膜ではスピン常磁性効果のため励起スペクトルが正負スピンに対応して分裂したスペクトルを観測し、その結果、正常状態よりエントロピーの高い超伝導状態が出現することを見出した。トンネル分光がFulde-FerreU状態の探索にとって有力な検証手段となることを確認した。同時に、トンネルスペクトルの解析により、フェルミ液体係数を決定することができ、電子間相互作用の定量的評価を可能にした。 3.結果の意義と今後の課題; 弱結合アルミニウム金属の清浄超伝導薄膜の可能性を期待したが、結果的には、非清浄膜におけるスピン常磁性効果による1次の超伝導転移、及び、高エントロピー超伝導状態を発見した。1次転移磁場より高い磁場中で期待されるFulde-FerreU状態の確認には至らなかった。この高エントロピー超伝導状態は理論的に予言されながら、実験的に見出されなかった新しい相転移の概音を加えることになった。他方、1次の超伝導転移は不均一性の影響をうけやすいことも見出され、今後、トンネル素子製造のために可能なかぎり微細な加工技術が要求されることになる。さらに、Fulde-FerreU状態は高磁場中で1次転移磁場より高く、かつ、せまい磁場範囲でしか期待されないので、多層人工長周期構造の導入による安定化の可能性を追求したい。
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