研究概要 |
PbTe-SnTe超格子の電気抵抗,磁気抵抗,ホール係数の測定を 1.5Kから300Kの間で行い、以下に述べる結果を得た。 (1) 7K以下の低温でこの超格子は超伝導になり、その臨界磁場の角度依存性より2次元的な超伝導体であることを見出した。 この超伝導はPbの微粒子の析出によると考えられるが、Pbの囲りにあるPbTeの性質にも依存していることが判明した。 この超格子のホール測定より、超伝導転移温度以上ではキャリア濃度が約【10^(18)】【cm^(-3)】程度の縮退半導体の性質を示しているので、Pbの析出が直接的に結合しているのではなく、Pbの微粒子がPbTeを媒体としてPbTe層内で2次元的にジョセフソン結合して、超伝導になると考えられる。実際、PbTeは 低温で誘電率が大きく、易動度が高くなるので、近接効果によるPbTe内へのクーパーペアの侵入距離は4Kで約300Aとなり、この超格子は少量のPbの析出でも超伝導になりうる。 (2) 低温においてホール係数は大きな磁場変化を示し、磁場によりP-n反転するのもあった。 これはこの超格子がPbTe層内に電子、SnTe層内に正孔が共存する、タイプ【II】であるためで、その磁場依存性のフィティングよりPbTeとSnTeのバンド端の不連続の大きさは、Ba【F_2】基板に成長させたもので約270meV,KCl基板のもので 約170meVと求められた。 (3) ホール係数の温度変化は150K付近でピークを示した。 これは、素材であるSnTe,PbTeの温度依存性と逆である。 高温での温度変化はSnTe層からPbTe層への熱励起が主な原因であると、又 低温での変化はSnTe層の構造相転移により、PbTe層とSnTe層の間で電子が再分布するためと考えられる。 これらはPbTe-SnTe超格子がタイプ【II】であることに由来している。
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