研究概要 |
(1)重いフェルミオン系Ce【Cu_2】【Si_2】の特異な超伝導の性質を調べるためにCuとSiのNMRを行った。Cuの核磁気緩和時間【T_1】は10K以上で 温度によらない。これはCeに局在モーメントが安定に存在する事を示す。【T_1】は10K以下で増大し始め【T_1】T=一定の関係に近づく。これは近藤効果によってモーメントが消失し、コヒーレンス状態にはいってフェルミ流体的状態になる事を示す。0.7K以下で超伝導状態にはいるが【T_1】は通常のBCS超伝導体のようなTc直下の極小や低温での指数関数的増大を示さず、0.1Kまで単調に【T^(-3)】に比例して増える。これは超伝導エネルギーギャップがフェルミ面の線上で消失している事を示している。 次にSiのナイトシフトKを測定した。Kは高温の常伝導では帶磁率に比例するが近藤温度Tk近傍で比例関係が崩れる。電子一核結合常故が変化している事を示唆する。またKは結晶構造を反映して著しい異方性を持つ。Tc以下ではKの減少を観測した。これはスピン帶磁率の減少を意味し、一重項超伝導性を強く示唆する。即ち、この系は異方的三重項超伝導の可能性が指摘されていたが、本研究によりこれが否定された。しかしギャップの著しい異方性の起源、ひいては超伝導発生の機構の解明は今後の重要な研究課題である。 (2)高密度近藤系のコヒーレンス性を研究するために、Ce【Cu_6】のCuのPQR,Ce【Ru_2】【Si_2】のSiのNMRを行った。【T_1】はいずれもTk以上で局在モーメントの存在を反映した温度依存性を示す。Tk以下ではフェルミ流体性を反映して【T^(-1)】に比例する。この様な移り変りをNMRで観測したものはこの研究が始めてである。上記のCe【Cu_2】【Si_2】も含めて詳しく比較すると【T^(-1)】に比例し始める温度とTkとの関係が物質により異なり新たな特性温度の導入の必要性を示唆している。
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