研究概要 |
酵母(S.Cerevisiae)が真核細胞のモデルとして、種々の細胞生物学的研究において有用であることが近年益々明らかになりつつある。液胞は植物細胞の体積の90%以上を占めるオルガネラでありながら、その研究は相対的に遅れていた。一方酵母の液胞は、中間代謝物やイオンを蓄積する機能を持ち、細胞内貯蔵庫として、細胞質のホメオスタシスを司どる傍ら、種々の加水分解酵素が局在することから、リリゾーム様機能も発揮している。本研究者らは、これまで酵母液胞膜の大量純化法を確立し、液胞膜機能の生化学的解析を進め、このオルガネラが従来考えられていたよりも生理学的に積極的な意味を持っていることを明らかにした。本研究では、このような背景の上に、生化学的遺伝学的手法を同時に駆使することのできる酵母の利点を生かし、液胞膜酵素としてのα-マンノシダーゼを指標として、液胞の形成機構とその過程における蛋白質のプロセシングの役割を明らかにすることを目的とした。 酵母液胞のα-マンノシダーゼを市賑パン酵母粗膜画分から10mM【Na_2】-【CO_3】,pH11により可溶化し、10mM Tris-Hcl pH9の条件下に、各種イオン交換カラムやヒドロキシルアパタイトカラム等により、約4000倍に精製した。精製標品には【107^k】,【73^k】,【31^k】のポリペプチドが存在し、活性はMonoQ-FPLCカラムにより、【107^k】のform【I】と【73^k】,【31^k】よりなるform【II】の2成分に分画された。【107^k】と【73^k】ポリペプチドの異同に関し、免疫化学的に、蛋白化学的にも検討した結果、【73^k】ポリペプチドは【107^k】ポリペプチドに由来することが示唆された。α-マンノシダーゼのform【I】と【II】の転換過程と液胞形成過程との関連、液胞内酵素であるカルボキシペプチダーゼYに対する抗体も含めた、各種抗体を用いた液胞形成過程の生化学的・組織化学的解析が興味ある問題である。
|