研究概要 |
高等植物ミトコンドリア【H^+】輸送性アデノシントリホスファターゼの【F_1】部(【F_1】ATPase)のサブユニットの内、αサブユニットはミトコンドリア内で、また少なくともβ,δ,δ′サブユニットは細胞質で合成されることを明らかにした。エンドウでは、このαサブユニットのミトコンドリア遺伝子はそのクローニング実験から4種あることが示された。事実そのαサブユニットは等電点電氣泳動で4つのバンドにわかれた。また、サツマイモ【F_1】ATPaseのβ,δ,δ′サブユニットはinvitroタンパク質合成実験でそれぞれ2種以上いずれも成熟型よりも分子量が大きい前駆体として合成された。一方、この成熟型βサブユニットは、そのアミノ基未端側アミノ酸配列の解析から、2種以上存在することがわかった。これらの結果は、高等植物【F_1】ATPaseの各サブユニットは多形体で、その遺伝子は複数あることを示している。高等植物チトクロムオキシダーゼは5種のサブユニット(サブユニットI-【V】)からなると、今まで報告してきた。今回の実験で、サブユニット【V】は3種のサブユニット(サブユニット【V】a,【V】b,【V】c)の混合物であり、サブユニット【IV】は哺乳動物のサブユニット【III】に相当していることがわかった。また、in vitroタンパク質合成実験で、サブユニット【V】群のみが細胞質で合成されることがわかった。その際、サブユニット【V】群は成熟型と同じ分子量の形で合成され、ミトコンドリアへ移行する際プロセシングは受けないことが示唆された。なお、サツマイモ塊根ミトコンドリアに存在するチトクロムオキシダーゼの前駆体は、サブユニット【IV】,【V】a,【V】b,【V】cからなる会合体で、いわゆるポリプロティン前駆体ではないことがわかった。これらのサブユニットの会合力は極めて強く、通常の薬品処理では解離しないものと考えられた。
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