研究概要 |
1.RNAプロセシングへのポリADP-リボシル化の関与の解析メッセンジャーRNA(mRNA)のキャップ部分がADP-リボース類似のリボース-5′-リン酸-リン酸-5′-リボースの構造をもち、ポリADP-リボシル化のアクセプターとなりうる構造である点に着目し、HeLa細胞ライセートによるアデノウィルスのβメジャー後期プロモーターからの転写と転写後修飾に及ぼすNAD(ADP-リボシル化の基質)と3-アミノベンズアミド(同阻害剤)の効果を解析した。その結果、〔【^(32)P】〕NADから【^(32)P】がAMP,ATP経由でRNAに活発にとりこまれる一方、ポリADP-リボシル化と思われるとりこみも若干みられることが明らかとなった。この知見は、ポリADP-リボシル化がRNAプロセシングに直接関与する可能性を示すとともに、今後の詳細な解析の必要を示唆した。 2.ポリADP-リボースグリコヒドロラーゼの精製と解析-ポリADP-リボースの分解に主役を演じるポリADP-リボースグリコヒドロラーゼを、仔牛胸線から75,000倍、単一にまで精製し、酵素学的諸性質を明らかにした。この中、本酵素に特徴的な性質として、長鎖(>20ADP-リボース単位)と短鎖(≦20ADP-リボース単位)のポリマーに対する作用様式が全く異なり(プロセシブvsディストソビュティブ)、Km値も0.4μMvs10μMと大きく違う点が注目された。この知見は、ポリADP-リボースの細胞内代謝が鎖長によって異なるという最近の観察結果とよく符合するとともに、ポリADP-リボースグリコヒドロラーゼが分解過程を通して、このポリマーの代謝ならびに(恐らく)種々推定されている機能を二元的に調節する可能性を示唆するように思われる。
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