研究概要 |
非ミトコンドリア蛋白質に特定のアミノ酸配列を持った小領域を遺伝子操作の手法で結合させることにより、ミトコンドリア局在化能を新たに獲得したハイブリッド蛋白質を作製した。この人工蛋白質の挙動を通して、蛋白質のミトコンドリア局在化の分子機能を解析した。 酵母ミトコンドリア外膜蛋白質の1つである分子量7万の蛋白質(以下70Kと略)の長さの異なる部分(1-21,1-61,1-81,1-292,205-558番目のアミノ酸配列)を大腸菌β-ガラクトシダーゼのN末端側に融合させた。これらのハイブリッド蛋白質の酵母細胞内での挙動を調べ、以下の現象を見い出した。 1.もとのβ-ガラクトシダーゼや205-558をもつ分子は細胞質にとどまるが、他のハイブリッド分子はミトコンドリアに局在する。2.70KのN末端部61残基以上を持つ分子種はミトコンドリア外膜に存在し、膜上で70K部分が膜内に、β-ガラクトシダーゼ部分が細胞質に突出した分子形態を持つ。3.一方、N末端部21残基を持つ分子種はミトコンドリアのマトリックス内で可溶性蛋白質として存在する。 以上の事実により、70Kのミトコンドリア外膜局在化に関し、N末端側61残基内に外膜の識別と膜結合のための情報が含まれ、さらにN末端21残基にはミトコンドリア識別能は保たれているが、外膜への結合能は消失しているという結論が導き出された。 現在さらに、これらのハイブリッド蛋白質のミトコンドリアへの移行現象を速度論的見知より解析しつつあり、外膜への結合の後β-ガラクトシダーゼ部分が酵素活性のある高次構造をとることが判明している。
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