研究概要 |
細胞膜に於て蛋白質が機能を発現するためには、プロセシングとアセンブリー(分子集合)という相互に密接に関連した過程を経なければならない。アセンブリーの過程は脂質分子と蛋白分子の分子集合およびサブユニット蛋白質の分子集合に大別される。細胞膜はその独自の機能としてイオン、栄養物質等の輸送というベクトル反応を営んでいる。本研究はこのような輸送を行なっている2つの代表的蛋白質【H^+】-ATPaseおよび糖輸送担体が蛋白質として生合成され、プロセシング等の後、各々細胞膜にアセンブリーし1つの機能単位を形成するまでの過程を詳細に解析する。60年度に得られた実績を以下にまとめる。(1)大腸菌の【H^+】-ATPaseに注目しアセンブリー変異株を多数分離した。【H^+】-ATPaseはα,β,γ,δ,ε,a,c,b,の8種のサブユニットから作られている。特にβとγにマップサレル変異株の中にアセンブリー変異株が多く見出された。βサブユニットの変異はGln41→Lys,Glu185→Lys,Gly223→Asp,Ser292→Phe,Gln361→end,Gln397→endであった。このような変異によってサブユニットのアセンブリーは不完全なものとなった。また各変異株のサブユニット量の解析からアセンブリーのモデルを提出した。(2)γサブユニットにマップされる変異株はいずれもナンセンス変異であった。すなわちGln14,Gln157,Gln226,Gln261,Gln269がendコドンに変換していた。これらの株のうちGln269→endの株のみが活性をもたない【H^+】ATPaseをもっていた。その他のものはいずれもアセンブリーに欠損が見られた。すなわちγサブユニットのカルボキシ末端側がアセンブリーに重要であることが明らかとなった。(3)大腸菌のメリビオース(α-ガラクトシド)輸送担体の遺伝子は研究代表者らによってクローン化され、塩基配列が決定されている。この輸送担体は糖と【Na^+】を共輸送することが明らかにされている。本年度は共役イオンの変異株5種を得た。いずれもPro122→Serの置換があり、細胞膜へのアセンブリーが異なっていた。
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