研究概要 |
1. センダイウイルス(HVJ)ゲノムRNAの塩基配列の決定 ゲノムRNAの塩基配列は昭和59年度迄に約6Kbを決定していたが、本年度は残りの約9Kbを決定し、全構造を明らかにした。この結果RNAは15383塩基より成り、その構造は3′端、5′端にはリーダーが存在し、その間に共通配列(R1,R2)にはさまれた6個の遺伝子が見出され、番々NP,P,M,F,HN,Lに相当することが明らかとなった。第2遺伝子には重複したもう1個のオープンフレームが存在し、非構造タンパク貭Cに相当するものと思われる。 2. HVJ転写の機構解析 リーダー・NP,NP,P+C,C各遺伝子に対するcDNAを個別に含むベクターpSV2-LeNP,pSV2-NP,pSV2-PC,pSV2-Cを種々の細胞にトランスフェクトし各遺伝子の発現について検討した。その結果pSV2-LeNPではNPタンパクの発現は認められなかったが、pSV2-NPでは発現が認められ、転写、翻訳の過程においてリーダー配列が重要な役割を担っていることが示唆された。pSV2-PCのトランスフェクションではSDSゲル電気泳動で解析する限りPタンパクの発現は認められたがCタンパクは認められず、一方pSV2-Cの場合には新たなタンパクの発現は認められなかった。しかし両者の場合とも、特に後者において培地中に多量のインターフエロンの分泌が認められ、Cタンパクの発現が起っていることが強く示唆されたので現在追及中である。 3. 無細胞系におけるHVJゲノムRNAの転写の解析 HVJゲノムRNAに依存した無細胞転写系の開発を試みそれに成功した。この系にはウイルス構成タンパク以外に宿主細胞の上清画分を必要とした。また転写産物のサイズは感染細胞内で認められるものと一致し、さらにキャップ【I】構造を持ち、ポリA鎖を結合していた。
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