研究概要 |
昨年度にひきつづき、透明帯糖蛋白質の糖鎖の分析と受精における糖鎖のプロセシングについて研究を行った。透明帯糖蛋白質の糖鎖をガラクトースオキシダーゼ酸化-NaB【H_4】還元法によりトリチウム標識したのち、ZP-1,ZP-2,ZP-3を精製した。それぞれの糖蛋白質がエンドグリコシダーゼF消化により糖蛋白質から遊離するN-型糖鎖とこの酵素では遊離しないO-型糖鎖をもつこと、N-型,O-型の比は糖蛋白質間で異なることは昨年報告した。それぞれの糖鎖の特徴を知るためにBioGel P4によるゲルロ過分析を試みた。卵巣透明帯から得たN-型糖鎖は55度C蒸留水によるゲルロ過分析の結果、すべて電荷をもったオリゴ糖であり、このうち約75%のオリゴ糖はシアル酸以外の電荷をもつものであることがわかった。電荷は硫酸基であろうと予想される。NaB【H_4】存在下でのアルカリ分解によって生ずるO-型糖鎖を同様にして分析すると、やはり大部分が電荷をもったオリゴ糖であった。しかしこの場合には電荷の80%以上がシアル酸によるものであり、シアリダーゼ処理したO-型オリゴ糖はP4ゲルロ過により5つのオリゴ糖に分画することができた。N-型及びO-型糖鎖のこのような特徴は、ZP-1,ZP-2ZP-3の間で共通であった。即ち、N-型,O-型糖鎖の存在比は糖蛋白質間で異なっているが、含まれる糖鎖の性質は非常によく似ていることがわかった。 ZP-3糖蛋白質は精子リセプター活性をもつと考えられており、その活性は糖鎖が荷うと予想されている。したがってZP-3にはリセプター活性を荷う特別の糖鎖の存在が期待されたが、今回の分析ではそれを証明することはできなかった。しかし、透明帯糖蛋白質の糖鎖の性質につき、その特徴を明らかにできたので、受精卵における糖鎖プロセシングの実態解明に役立つものと考える。
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