研究概要 |
1.亜硝酸と反応させた食品たん白質の変化 カゼイン、卵白アルブミンに亜硝酸を酸性下で反応させると、リヂン,アルギニン,チロシン殘基と共にトリプトファン殘基が著るしく損傷し、通常とは異なる5つの新しいアミノ酸が、アミノ酸溶出パターン上に現われる。そのうち3つはシステイン酸,メチオニンスルフオキシド,ニトロチロシンと推定した。 2.亜硝酸とトリプトファンの反応から生じる変異原物質 トリプトファンは酸性下で亜硝酸と反応すると多種類の変異原物質を生じ、その変異原性は他のアミノ酸からの生成物に比べて著るしく高かった。反応液をTLCに供すると8つのスポットを与えたので各スポットからの抽出殘さについて変異原性(Ames test),DNA損傷性(Rec-assay)を測定した。2つのスポットが強い変異原性を示したので今回は最も強い活性を示したスポットからの物質の分離・同定を試みた。この物質をメチル化後GCに供すると2つのピークを与えたが、主生成物と思われるピークのMSから、この物質はN-ニトロソインドールプロピオン酸と推定した。 3.酸性下で亜硝酸と反応したBHAから生じた変異原物質 食品成分とはいえないが、食品添加物として油脂食品に用いられてきたBHAも酸性下で亜硝酸と反応し、強い変異原活性を生じることを見出した。この反応液のTLCは9つのスポットを与えたが、各スポットからの抽出殘さについてAmes testを行い、2つのスポットに変異原活性が認められた。このうちより活性の強かった物質を結晶化し、機器分析値から、2-tert-butyl-p-quinone(t-BQ)と同定した。このt-BQは以前に我々がDNA損傷性はあるが、変異原性は認められないと報告した物質であるが、今回濃度を変えてAmes testを行い、0.11μmol/plate投与で顕著な変異原性を有することを明らかにした。
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