研究概要 |
食品の品質劣化、変敗は主に食品中の脂質の酸化によって生ずる過酸化脂質に起因する。また生体内においてもこの過酸化脂質は老化や発ガンにかかわると言われている。本研究は食品の保存性、貯蔵性を高める観点から、安全な、効果の高い抗酸化性物質を単離し、構造解析することを目的とした。 人類が食用にしてきた植物に注目し、とくに香草系香辛料を選んだ。本年度はオレガノ(Orignum vulgare L.)の極性の高い抽出区分から抗酸化性物質を単離した。具体的には、オレガノの乾燥葉を塩化メチレン、メタノールで抽出し、後者の水溶性区分を精製した。抗酸化活性をロダン鉄法、TBA法で測定してモニターしながら、前記区分をポリアミドを用いたクロマトグラフィで精製し、新規化合物(1)、プロトカテキュ酸、コーヒー酸、ロスマリン酸の活性化合物を単離した。この精製過程で本研究設備備品の液体クロマトグラフ、フラクションコレクターおよびクロマトカラムはおおいに役立った。化合物(1)はmp 204〜205℃の無色針状結晶で分子式【C_(20)】【H_(22)】【O_(10)】であった。IR,【^1H】-NMR,【^(13)C】-NMR,MSなどによる機器分析、加水分解物、誘導体の解析により、本化合物を4-β-D-glucopyranosyloxybenzyl 3,4-dihydroxybenzoateと決定した。また合成によってこの構造を確認した。本化合物の抗酸化活性はα-トコフェロールよりも強く、合成抗酸化剤のBHA,BHTとほぼ同等であった。オレガノに共存するヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシケイヒ酸類、フラボノイドとともに抗酸化能が発揮され、保持されていると考えられる。ひきつづき、活性化合物の検索および単離化合物と脂質との相互作用を検討しており、さらに酸化抑制作用のみならず、広く生体における機能を解明していきたい。
|