研究課題/領域番号 |
60217001
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研究種目 |
特定研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小沢 瀞司 群馬大学, 医, 教授 (40049044)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1985年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | グルタミン酸 / カルシウムイオン透過性 / 海馬錐体細胞 / パッチクランプ法 |
研究概要 |
グルタミン酸および構造類似の酸性アミノ酸投与が中枢神経細胞の壊死を招くことから、グルタミン酸の過剰を中枢神経系の変性疾患の成因の一つとする仮説がある。一方高濃度のカルシウムイオン(【Ca^(2+)】)の細胞内への貯留が細胞死をもたらすことが知られている。従って本研究ではグルタミン酸が中枢神経細胞形質膜の【Ca^(2+)】透過性にどのような影響を与えるかを定量的に明らかにすることを試みた。 実験は胎生17〜20日目のラット胎児の海馬錐体細胞を初代培養し、細胞全体の膜電流を測定するパッチクランプ法を適用し、種々のイオン環境下でグルタミン酸感受性電流を記録することによって行った。培養海馬錐体細胞のグルタミン酸感受性チャンネルの活性化に必要なグルタミン酸濃度は5μMであり、330μMで反応は飽和に達した。またグルタミン酸を数秒間以上持続的に投与しても脱感作による反応の減弱は見られなかった。 グルタミン酸感受性チャンネルは陽イオンのみを透過させ、ナトリウムイオン(【Na^+】)をはじめとするアルカリ金属イオンに対してはほぼ等しく高い透過性を示した。次に細胞外液からアルカリ金属イオンを除去して不透過な陽イオンで置換し、【Ca^(2+)】を定量的に加えると【Ca^(2+)】濃度の増加に伴い、グルタミン酸感受性電流は増大し、その反転電位は脱分極側に移動した。よって【Ca^(2+)】はグルタミン酸感受性チャンネルを透過することが結論された。これに反して、マグネシウムイオン(【Mg^(2+)】)の透過性はきわめて低かった。定電場理論に従うと、グルタミン酸存在下での形質膜の【Na^+】の透過係数を1とした場合の【Ca^(2+)】および【Mg^(2+)】の相対的透過係数はそれぞれ、2.4,0.1であった。 以上の結果はグルタミン酸が中枢神経細胞の形質膜を介する【Ca^(2+)】の細胞内への流入を持続的に促進することを示しており、このことが神経細胞の変性の一つの原因となりうることを示唆する。
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