研究概要 |
本研究はヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頚癌や疣贅状発育異常症(EV)患者に発生する皮膚癌との関係を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の結果を得た。 1) 我が国の子宮頚癌、コンジローマ及びEV患者からのHPVの分離とその解析:a) 子宮頚癌引例、子宮頚部上皮内癌4例、外陰癌2例につき、その摘出材料中のHPUDNAの解析を行った。その結果、子宮頚癌の41.9%にHPV DNAが存在し、同組織中に認められるウイルスタイプは16型が35.8%、18型が7.7%、末確認型が53.8%でなることを示した。現在末確認型のクローニングが進行中である。b) 15名の患者につき、その男性性器に発生したコンジローマ中のHPVの検索を行い、10名に6,11,16,18型が単独又は重複感染していることを明らかにした。c) 3兄弟全員がEV患者である家族のEV皮疹中よりHPVの分離を行い、3名中2名から14型を、残り1名からHPV38型を分離し、兄弟でのEV発症に必ずしも同一型のHPVが関与しないことを明らかにした。d) その他、腫瘍腺癌,舌癌、各1例,食道癌10例についてHPVの検索を行ったがすべて陰性であった。 2) HPV-17型及びHPV-20型の全塩基配列:前年度17型、20型がEV患者の皮膚癌発生に密接な関係を持つことを明らかにしたが、本年度は上記両ウイルスの全塩基配列の決定を完了し、その遺伝子構成を明らかにした。 3) EV患者の癌組織中のHPV特異RNA:HPV17型が分離された患者の癌組織中に17型特異mRNAが存在していることを確認し、1.3KbmRNAがHPV17DNA上の【E_2】,【E_4】【E_5】領域から転写されたものであることを明らかにした。 4) 我が国におけるEV患者の実態調査:前回の調査でEV患者66名を確認したが、本年度は新たに14名の患者を追加確認することができた。またEV患者の皮膚癌発生に遺伝的、物理的な要因他の関与を明らかにした。
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