研究概要 |
セルロース誘導体及び複合体の構造特性とその生医学材料としての二,三の特性を検討し、以下の成果を得た。 1. 代表的なセルロース誘導体である酢酸セルロース(CA),メチルセルロース(MC),トシル及びトリチルセルロースの環内炭素の【^(13)C】-NMRスペクトルを解析し、グルコース残基内での置換基分布を定量する方法を確立すると同時に、それぞれの化学修飾反応におけるC-2,C-3及びC-6位水酸基の反応性を明らかにした。 2. 種々のタイプのCAを合成し、グルコース残基内での置換基分布と水溶性との関係を明らかにした。 3. 不均一反応で合成される市販MCは熱可逆的なゾル-ゲル転移を示す。この転移機構を明らかにすべく、均一反応系で種々のMCを合成し、平均置換度及びセルロース分子鎖内での置換基分布と水溶性との関係を検討した。 4. セルロース誘導体間で形成されるポリイオンコンプレックス(PIC)の形成挙動及び得られるPICの生体適合性をin vivo及びinvitroでの評価法を用いて検討した結果、セルロース系PICは生体内吸収性の抗血栓性材料として有望であることを見いだした。また、PICの電荷バランスと全血凝固時間、血小板粘着能及び接触相活性化能との関係を検討し、興味ある知見を得た。 5. セルロースとポリアミノ酸とからなる複合体は生体親和性に優れた生医学材料としての期待がもてる。そこで、アミノアルキルセルロースを開始剤とし、α-アミノ酸のN-カルボン酸無水物(NCA)を重合さすという手法を用いて、側鎖にポリアミノ酸を有するセルロースグラフト共重合体を合成し、その抗血栓性、体内吸収性についてin vivoで検討した結果、抗血栓性の体内吸収性材料として非常に有望であることを見いだした。
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