研究概要 |
炭素資源の有効利用を考える上で、ファインケミカルスの構造特性を生かした機能性物質の開発は最も重要な研究課題である。当研究においては、構造特性を生かした新規な芳香族複素環系機能性物質を開発することを目的として研究を遂行し、以下の成果をあげた。 1.PPPMO法を用いて色素の吸収スペクトルを定量的に解析し、色と構造の関係を定量化することによって、キノン系近赤外吸収色素の合成デザインを行った。赤外吸収色素はレーザ光記録材料用機能性色素として最近特に注目されており、その開発は急務とされている。当研究においては、世に先がけて数多くのキノン系赤外吸収色素を提案し社会のニーズに対応した。すなわち、5-アミノ-8-アリルアミノ-2.3-ジシアノナフトキノン誘導体、フェノチアジンキノン、フェノセレナジンキノン系赤外吸収色素の合成とそれらの物性について公表した。また、これらの色素は溶液中でキノン-キノンクミン互変異性を示し、大中な色調の変化を示すことから、ホトクロミズムやエレクトロクロミズムを示す機能性材料に関連して興味深いことが判った。 2. 可視光エネルギーを有効利用する上で光吸収体としての色素の果す役割は非常に大きいが、N,N-ジアシルインジゴはトランス-シス光異性化によって太陽エネルギーを熱エネルギーに変換しうることが判った。また、N,N′-ジアルキルインジゴは光電子移動反応によって還元され、光触媒として作用することを見い出した。 3. 新規な生理活性物質として3-置換-2-フェニルチオフラボン誘導体やベンゾチオピラノ〔2.3b〕-1.5-ジアゼピン誘導体を合成し、それらの生理活性と構造の相関性について検討した。また、それらのの部については新規な複素環系機能性色素への応用についても検討した。 以上の成果は学会発表を通じて公表するとともに、下記の論文を含む16報の論文によって公表した。
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